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「健康経営がマンネリ化している」と感じたら? 突破口となる『経営層のリーダーシップ』を引き出すための実践ロジック

朝倉 恒憲
朝倉 恒憲
株式会社FiNC Technologies ウェルビーイング推進室 室長 健康経営の現場を熟知した、年間数十社をサポートする健康経営エキスパートアドバイザー。中小規模法人から大規模法人まで、さらに「ブライト500」「ホワイト500」の認定支援実績も多数。

「健康施策を企画しても、従業員の参加率が上がらない」

「現場の担当者だけで頑張っている感があり、社内全体の熱量が低い」

ある程度健康経営に取り組んできた企業様から、こうした停滞感(マンネリ)に関するご相談をよくいただきます。

施策の内容を見直すことも大切ですが、実はもっと根本的な原因があるかもしれません。

それは、「経営層の関与(リーダーシップ)」です。

多くの企業で「形だけの健康経営」になってしまう要因の一つとして、経営層のリーダーシップ不足や、成果がモニタリングされていない点が指摘されています 。

本記事では、停滞した健康経営を再加速させるために不可欠な「経営層の巻き込み方」について、エビデンスに基づいたアプローチを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ今、「経営層の関与」が絶対に必要なのか
    1. 1.1.データで見る「経営レベル会議」のインパクト
  2. 2.経営層を振り向かせる「3つの説得ロジック」
    1. 2.1.① リスク管理と「人的資本」の視点
    2. 2.2.② 組織風土とエンゲージメントへの効果
    3. 2.3.③ 外部評価(ブランディング)の視点
  3. 3.実践!経営層を巻き込む具体的ステップ
    1. 3.1.ステップ1:全社方針の明文化と発信
    2. 3.2.ステップ2:経営会議の「定例議題」にする
    3. 3.3.ステップ3:体制構築と責任者の設置
  4. 4.成果測定:経営層に見せるべき「指標」
  5. 5.まとめ:担当者の役割は「運営」から「経営への橋渡し」へ

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なぜ今、「経営層の関与」が絶対に必要なのか

「社長は忙しいから」「担当部署に任されているから」と、現場だけで完結させていませんか?

しかし、データは「経営層が関与しない施策は効果が出にくい」ことを示唆しています。

データで見る「経営レベル会議」のインパクト

研究データによると、組織的な取り組みの効果を分析した際、「経営レベルの会議での議題」に挙げている企業は、そうでない企業に比べて、運動プログラムや栄養プログラムなどの実施率(調整オッズ比)が有意に高い傾向にあることが分かっています 。

つまり、担当者が現場で旗を振るだけでなく、経営会議のテーブルに「健康」という議題が載るかどうかで、施策の実行力や組織的な動きに大きな差が生まれるのです。

また、経営トップが方針を明確に定め、自らが模範となる行動をとることが、健康づくりの成果を高める組織的要因として重要であるとも指摘されています 。

経営層を振り向かせる「3つの説得ロジック」

では、多忙な経営層をどのように巻き込めばよいのでしょうか。

「社員の健康が大切です」という情に訴えるだけでは不十分です。経営層が反応する「共通言語」で語る必要があります。

① リスク管理と「人的資本」の視点

経営層にとって、従業員が健康を害しパフォーマンスを発揮できない状態は、労働機会の損失や事故リスクの増加に直結する経営課題です 。

特に近年は「人的資本経営」への関心が高まっており、従業員への健康投資はコストではなく、企業価値向上のための「投資」であるという認識が広がっています。

「健康経営は、企業の持続的な成長とリスク管理のための投資である」と、経営戦略の文脈で説明することが重要です。

② 組織風土とエンゲージメントへの効果

経営層がコミットメントを示し、従業員の健康に配慮する姿勢を見せることは、「会社が自分たちを大切にしてくれている」という従業員の認識(POS:知覚された組織的支援)を高めます 。

これにより、ワーク・エンゲイジメント(仕事への熱意・没頭・活力)が向上し、結果として業績向上や人材定着につながるという「組織への波及効果」を訴求しましょう 。

③ 外部評価(ブランディング)の視点

健康経営優良法人の認定など、外部からの評価は、採用市場におけるブランディングや取引先からの信頼獲得につながります 。

特に上場企業であれば投資家へのアピール、非上場企業であれば人材確保や地域での信頼性向上など、具体的なメリットを提示することで経営層の関心を引くことができます。

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実践!経営層を巻き込む具体的ステップ

明日からできる具体的なアクションを整理しましょう。

ステップ1:全社方針の明文化と発信

まずは、企業の理念やビジョンに基づき、トップの言葉で「健康経営を行う」と宣言してもらうことです。

健康経営ガイドブックでも、経営トップの発信の有無や、従業員・管理職間での対話の頻度が、健康経営の浸透状況を評価する指標となり得るとされています 。社内報やイントラネットで、社長メッセージとして発信することから始めましょう。

ステップ2:経営会議の「定例議題」にする

前述の通り、これが効果的なレバーです。

毎月でなくとも、四半期に一度は「健康経営の進捗報告」の時間を確保してもらいましょう 。

報告の場があるだけで、全社の優先順位が変わります。ここでは、単なる施策の実施報告だけでなく、次に述べる「成果指標」を用いることが重要です。

ステップ3:体制構築と責任者の設置

健康経営の実効性を高めるためには、担当者任せにせず、役員クラスを「健康経営推進の責任者」として任命してもらうことが理想的です 。

経営層が責任を持つことで、予算措置や組織横断的な連携がスムーズに進みます。

成果測定:経営層に見せるべき「指標」

経営層を巻き込み続けるには、やりっぱなしにせず成果を報告する必要があります。以下の視点でKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定しましょう 。

  • 最終的な目標(KGI): プレゼンティーイズム(生産性低下)の改善、アブセンティーイズム(病欠)の減少、ワーク・エンゲージメントの向上など、経営インパクトのある指標を設定します 。

  • プロセスの評価(KPI): 施策への参加率はもちろん、「経営トップのコミットメントに対する従業員の認知率」や「会社が健康を支援してくれているという実感(POS)」なども、組織風土を測る重要な指標です 。

まとめ:担当者の役割は「運営」から「経営への橋渡し」へ

健康経営がうまくいかない時、担当者は「施策の中身」に目を向けがちです。

しかし、本当に必要なのは、その施策を推進するための「組織のエンジン(経営層のリーダーシップ)」を動かすことです。

  • 全社方針を明文化する

  • 経営会議の議題にする

  • 成果をモニタリングし、数字で語る

この3点を意識するだけで、貴社の健康経営は「福利厚生」から「経営戦略」へと進化します。

FiNC for BUSINESSでは、経営層への報告に活用できるデータの可視化や、全社的な意識改革を促すソリューションを提供しています。「上層部をどう説得すればいいか分からない」というご担当者様も、ぜひ一度ご相談ください。

【引用・参考文献】
[1] 産業医科大学 森晃爾. "健康経営の課題と成果を上げるための基本 (資料17)"
[2] 経済産業省. "健康経営ガイドブック 2025年3月版". 健康経営優良法人認定事務局編
[3] 森晃爾ら. "職場における健康増進プログラムの効果的な実践に影響する組織要因". 産業医学レビュー. 2020年33巻2号
[4] 経済産業省. "健康経営の推進について". 2024年3月

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