健康経営の「財務効果」を最大化する：経営層を納得させるROI測定戦略と投資対効果の算出方法

2025-12-12 05:32FiNCコンサルティングチーム

この記事でわかること

「健康経営は重要だが、費用対効果（ROI）をどう証明すれば良いのか？」

「システムを導入しても従業員が使わず、投資が形骸化しているのでは？」

企業の人事労務担当者、あるいは経営企画者の皆様は、健康経営の推進にあたり、このような「投資の費用対効果の証明」という本質的な課題に直面しているのではないでしょうか。

現状、健康診断、ストレスチェック、産業保健といった管理業務が、紙やExcel、複数の高額なシステムに分散し、煩雑な管理体制となっている企業は少なくありません。
これは業務負荷が高いだけでなく、ROIを著しく低下させる要因です。

しかし、経済産業省が推進するように、健康経営は単なる福利厚生ではなく、企業価値を高めるための戦略的投資です。

本記事では、健康経営が企業にもたらす具体的な財務インパクトを解説し、経営層を納得させるROI測定方法、そして「コスト削減」と「効果向上」を同時に実現するための実践的な戦略をご紹介します。

▼「やらされる健康経営」から「自走する健康経営」へ

経営戦略としての健康経営：財務指標への具体的な影響

健康経営は、企業の「人的資本」という資産への投資であり、最終的に企業の収益性、企業価値そのものを向上させます。

財務指標	健康経営によるインパクト	具体的なメカニズム
売上高・生産性	向上	従業員の活力・エンゲージメント向上 $\rightarrow$ 生産性・創造性の向上
販売費・一般管理費	削減	休職・欠勤率の低下（アブセンティーズム改善）、離職率の低下による採用・教育コストの削減
営業利益	向上	生産性向上とコスト削減による相乗効果

特に重要なのが、プレゼンティーイズム（出勤はしているが心身の不調で生産性が低下している状態）の改善です。

経済産業省や厚生労働省のデータからも、プレゼンティーイズムによる労働損失は非常に大きいことが示されており、ここを改善することが目に見えない最大のコスト削減要因となります。

健康経営は、長期的な企業価値にも貢献します。

企業ブランド・採用力向上: 「健康経営優良法人2025」などへの認定は、無形資産としてのブランド価値を高め、優秀な人材の獲得競争で優位に立ちます。
株価・投資家評価: 近年、ESG投資の潮流において、健康経営は非財務情報（人的資本）の開示と評価に直結します。ROA（総資産利益率）やROE（自己資本利益率）といった長期的な企業価値向上を促す要因として、投資家からの評価が高まります。
（出典：経済産業省「これからの健康経営について」）

健康経営を「戦略的投資」として位置づけるためには、その投資効果を具体的な数値で証明し、財務効果を可視化する必要があります。

健康投資ROIは、投じたコストに対してどれだけの効果（利益）が得られたかを示す指標です。

健康投資ROIの基本と算出ロジック ROIが100%を超えれば、「投じたコスト以上のリターンがあった」と明確に証明でき、次年度予算獲得の強力な根拠となります。

効果（利益）を算出するためには、以下のKPI（重要業績評価指標）を金銭的価値に換算する作業が必要です。

これらのKPIを正確に測定するためには、バラバラに散在している従業員の健康データを一元化し、「見える化」することが不可欠です。

ROIを高めようとしても、多くの企業が「多重管理によるコスト増」と「投資の形骸化」という二つの壁にぶつかり、財務効果が上がらない状況に陥っています。

従来の体制では、以下のような構造でROIが低下します。

管理業務の一元化: 健診結果管理、ストレスチェック、インセンティブ管理など、人事担当者が必要な機能を単一のプラットフォームに統合する。
利用促進によるコスト優位性: 従業員が自発的に使い続けるアプリやサービスを導入することで、データが自然に集まる環境を作り、それに付随する管理システムは標準機能としてコストを抑えて利用できるようにする。

この戦略により、複数のベンダーへの支払いと手動集計業務が不要になり、管理コストを劇的に削減できます。削減したコストは、企業の健康投資ROIを押し上げる「効果（利益）」となります。